Brain Sound Lab脳波サウンド研究所

コラム · 2026.10.23

音のHzと脳波のHzは何が違う?

「440Hzの音」「10Hzのバイノーラルビート」「16Hzの音量変調」「10Hzの脳波」はどれもHzという同じ単位で書かれます。ところが数えている現象はそれぞれ別のものです。この記事ではHzが何を数えているかを4つに分けて説明します。4つが分かると「◯Hzの音で脳波が◯◯になる」という説明をどう読めばよいかがはっきりします。

Hzは「1秒に何回くり返すか」の単位

Hz(ヘルツ)は1秒あたりのくり返しの回数を表す単位です。1秒に10回なら10Hzで1秒に440回なら440Hzです。

単位は回数を表すだけで何がくり返しているのかは単位からは分かりません。音と脳波の話で出てくるHzは少なくとも次の4つに分かれます。

呼び方何がくり返すか数字の目安どう分かるか
音の高さ空気の圧力の揺れ人が聴けるのはおよそ20Hzから20,000Hz高い低いとして聞こえる
左右差(バイノーラルビート)左右の音の高さの差から頭の中で生まれる周期およそ1Hzから30Hzうなりとして感じる
音量変調音の大きさの上げ下げおよそ1Hzから数十Hz音の揺れとして聞こえる
脳波頭皮で測る電気の揺れおよそ0.5Hzから100Hz聞こえない。電極で測って初めて分かる

同じ「10Hz」でも上の4つのどれを指しているかで意味が変わります。数字の目安は代表的な範囲で資料によって少し違います。

音の高さのHz

いちばん身近なHzです。空気の圧力が1秒に440回揺れると440Hzの音になり音楽ではラの音の基準としてよく使われます。数字が大きいほど高く聞こえ小さいほど低く聞こえます。

人が音として聴き取れるのはおよそ20Hzより上です。だから「10Hzの音を聴く」と言われても音の高さとしての10Hzは耳にはほとんど聞こえません。10Hzと書かれた音源はたいてい次に説明する左右差か音量変調のどちらかです。

528Hzや432Hzという数字はこの音の高さのHzです。音楽の調律の基準や純音の高さを指していて脳波の数字ではありません。しくみは528Hzの響きと432Hzと440Hzのページで聴き比べられます。

左右差のHz(バイノーラルビート)

左の耳に200Hzの音を右の耳に210Hzの音を別々に届けると1秒に10回ほどの周期を感じます。この10Hzが左右差のHzです。

音源のファイルに10Hzの音は入っていません。入っているのは200Hzと210Hzの2つの音で10Hzは聴いている人の頭の中で生まれます。ヘッドホンかイヤホンで左右を分けたときだけ起きるので宣伝文にはいつもヘッドホンの指定が付いています。詳しいしくみはバイノーラルビートとはで説明しています。

音量変調のHz

一つの音の大きさを1秒に16回上げ下げすると16Hzの音量変調になります。音の高さは変わらず大きさだけが周期的に揺れます。スピーカーでも起きる現象で左右を分ける必要はありません。

左右から同じ音量変調の音を鳴らすモノーラルビートや音を短く区切ってくり返すアイソクロニックトーンもこの仲間です。どれも「土台になる音の高さ」と「揺れの速さ」の2つの数字を持っていて宣伝で書かれるHzはふつう揺れの速さのほうです。実際の音はβ波と16Hzの音量変調のページで原曲と比べられます。

脳波のHz

脳波は頭皮に付けた電極で測る電気の揺れです。揺れの速さをHzで表し速さの範囲ごとにデルタ・シータ・アルファ・ベータ・ガンマという名前が付いています。

名前速さの目安よく見られる場面
デルタ0.5Hzから4Hz深い眠りのとき
シータ4Hzから8Hzうとうとしているとき
アルファ8Hzから13Hz目を閉じて起きているとき
ベータ13Hzから30Hz目を開けて考えているとき
ガンマ30Hzより上研究の途中で解釈が定まっていない

境目の数字は資料によって1Hzか2Hzほど前後します。場面はあくまで目安でこの表から気持ちや能力を読み取ることはできません。

脳波のHzは音と違って聞こえません。測って初めて分かる数字です。音のHzは音源を作った人が決められますが脳波のHzは聴いた人の頭で何が起きたかを測らないと分かりません。

同じ数字でも対応表は作れない

「アルファ波は10Hzだから10Hzの音を聴けば落ち着く」という説明は音のHzと脳波のHzを同じものとして扱っています。この説明が成り立つには音の周期に脳波が引き込まれるという途中の段階が要ります。

その段階を調べた研究は2023年に系統的レビューとしてまとめられました。対象になった14件の研究のうち脳波の同調を支持したのは5件で支持しなかったのは8件でした。著者らは結論が出ていないと述べています。内容はバイノーラルビートの効果はどこまで分かっている?で整理しています。

だからこの研究所では「目的ごとに脳波の帯域を決めて音のHzを合わせる」という一覧表を作りません。脳波の帯域名は状態の目安であって音の選び方を決める根拠が研究でそろっていないからです。

Hzの説明を読むときの3つの手順

音源や記事に「◯Hz」と書かれていたら次の順に確かめると読み違えが減ります。

手順確かめること
1. 何のHzか音の高さ・左右差・音量変調・脳波のどれを指しているか
2. どう聴くか左右差ならヘッドホンが要る。音量変調ならスピーカーでも成り立つ
3. 脳波の話は測ったのか脳波のHzを持ち出す説明が実際に脳波を測った結果に基づいているか

3つ目で「測っていない」と分かったらその説明は音のHzの話であって脳波のHzの話ではありません。聴いて心地よいかどうかは本人の感覚として大切にしつつ脳波の主張とは分けて受け取ってください。

自分の耳で確かめるには

この研究所の周波数から音楽を楽しむでは左右差と音量変調を同じ曲で聴き比べられます。音楽に自然音を足すでは左右差を帯域から選んで曲に重ねられます。どちらも脳波の変化を保証する機能ではなく4つのHzの違いを耳で確かめるための機能です。

音量は小さめから始めてください。不快に感じたら止めてください。

よくある質問

音のHzと脳波のHzは同じ意味ですか?

同じ意味ではありません。どちらも1秒あたりのくり返しの回数を表す単位ですが音のHzは空気の圧力の揺れを数え脳波のHzは頭皮で測る電気の揺れを数えています。音のHzをそろえても脳波が同じHzになるとは限りません。

10Hzの音というのは聞こえるのですか?

音の高さとしての10Hzは人が聴き取れる範囲より低くほとんど聞こえません。10Hzと書かれた音源はたいてい左右の音の高さの差が10Hzのバイノーラルビートか音量が1秒に10回揺れる音量変調のことです。

バイノーラルビートと音量変調はどう違いますか?

バイノーラルビートは左右の耳に高さの違う音を別々に届けたときに頭の中で生まれる周期でヘッドホンが要ります。音量変調は一つの音の大きさを周期的に上げ下げする加工でスピーカーでも成り立ちます。

アルファ波が10Hzなら10Hzの音を聴けばアルファ波になりますか?

そうとは限りません。音の周期に脳波が引き込まれるかどうかを調べた2023年の系統的レビューでは14研究のうち支持5件と不支持8件で結論が出ていません。脳波の帯域名から音のHzを決める対応表は作れないと考えています。

更新日

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